ハムエッグな日

まあいい一日だった、という記録

脳梗塞で入院してしまった~復帰途上で思うこと~

頭痛を甘くみてはいけない

しばらく前から後頭部が痛かった。きっと寝違えだろうと思っていた。

市販の痛み止めを飲んで普通に生活していたが、歩いていると体が勝手に片側に寄っていく感覚があった。駅では怖くてホームの端に近寄れなかった。

ある日、体の片側にしびれを感じ、コーヒーにむせた。ようやく「これまずいな」と、近所の脳外科に駆け込み、MRI検査で脳梗塞と分かった。

救急病院に運ばれて10日ほど入院した。投薬とリハビリのおかげで、半身のしびれや感覚麻痺、飲み込みにくさは残るものの、体はほぼ動くようになった。

コロナ禍での特別な思い

以前ケガで入院は経験しているが、今回は気持ちの深刻さが違った。

後遺症など今後への不安もあるが、コロナ禍に医師や看護婦に迷惑をかけてしまったという複雑な思いが、気持ちをさらに重くした。

入院前には、簡易検査で感染していないかを調べられる。しかし一刻を争う重症患者には、医師たちは防護服だけでリスク覚悟で治療にあたる。頭が下がる。

そんな中、看護師(女性も男性も)たちは、みな明るく元気だった。

「大丈夫、ちゃんと帰れるから」、「我慢しないで夜中でも呼ぶんだよ~」  

救われた、励まされた、癒された。

ただ、食事は「とろみ食」だったので、何とも食べた気がしなかった。献立には鳥肉とあるが、食べても豆腐にしか思えなかったり。仕方ないんですけど。

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ある日のとろみ食

10年前に他界した父も長年、施設で「とろみ食」を食べていたが、どんな気持ちだったんだろう、などと考えてしまった。

去年酒をやめてから一転甘いものが好きになり、病院でもプリンやゼリーが出ると涙が出るほどうれしく美味しかった。(甘いものの食べ過ぎは動脈硬化の原因になりますよ・・・)

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献立表には「フルーツポンチ風」と。


別に「風」と言わなくてもいいと思うのだが、なんか奥ゆかしくて好感が持てた。大丈夫、突っ込みませんから。

どれも大して甘くないのだが、それもまた特別感を醸し出していい。

おかゆさん(昔、母は”さん”を付けていた)のお供に、ふりかけなど色々なものがあった。「たいみそ」とか「めんたいソース」とか、どこに売っているのこれ?と思いつつ、楽しかった。

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病室から見た朝日

「自分の仕事」

退院の日の朝、早々に普段着に着替え、「もう帰っていいですか」と看護師にせっつく。苦笑しながらも書類などを揃えてくれ、帰宅後の注意点を丁寧に教えてくれた。

娘よりずっと若いだろう。夜勤明けなのに元気そうで、病棟の出口まで見送ってくれた。

「来るときはぐったりで、帰るときだけさっさと勝手ですいませんね」と言うと、

看護師は静かに言った。

「元気になって帰ってもらうのが私たちの仕事ですから。よかったです」

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10日ぶりのコーヒーに感動

当たり前ではなかった”しあわせ”

当たり前にしていたことがどれだけ”しあわせ”で”ありがたい”ことだったか、月並みだが身に染みた。

「食べたいものを食べたいときに食べる」

「行きたいときに行きたいところへ行く」

「痛みのない眠りにつく」

 

そして最後にもうひとつ、いやふたつ。

「きっと明日もあると思える」

「感謝したい人がいる」

 

帰宅後、思っていたより手足のしびれが強くて戸惑った。風呂に入っても水風呂のようで寒い。箸も持ちにくい。足が痛くて長く歩けない。

山歩きも、農作業も、もう出来ないかもしれない。

でも今、気持ちはとてもあたたかい。

自分にできることがきっとある、ゆっくり丁寧に生きていこう、と。